医学部選びで注目される国際バカロレア(IB)資格
医学部選びにおいて海外に目を向ける生徒が多くなってきています。
国内外の大学でもその門戸を広く開いてきており、ここ数年で日本でも多くなってきているのが国際バカロレア(IB)資格と、その資格を持つ生徒が受けられる入試制度であるIB入試です。
国際バカロレア(IB)とは
国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラム。
国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は、1968年、チャレンジに満ちた総合的な教育プログラムとして、世界の複雑さを理解して、そのことに対処できる生徒を育成し、生徒に対し、未来へ責任ある行動をとるための態度とスキルを身に付けさせるとともに、国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保することを目的として設置されました。
現在、認定校に対する共通カリキュラムの作成や、世界共通の国際バカロレア試験、国際バカロレア資格の授与等を実施しています。
IB資格のうち、高校生が対象であるディプロマ(DP)プログラムを取り入れている学校(IB認定校)が、私立中高一貫校・インターナショナルスクールを中心に増えています。
このディプロマ(DP)プログラムの所定カリキュラムを2年間履修し、所定の成績を収めると国際バカロレア資格が取得できます。
ただし、原則として日本語ではなく英語、フランス語、スペイン語で実施されるため、語学力が要求されます。
関西でも海外医学部に注目する生徒が増加
関西でも、同志社インターナショナルスクール国際部、立命館宇治高等学校、関西学院大阪インターナショナルスクール、カネディアン・アカデミィ等がIB認定校として有名です。
この国際バカロレアディプロマ(IBDP)の認定を受けると高卒認定も得ることができ、世界中の大学入試を受けられるだけでなく、日本国内でも医学部に限らず多くの大学で有利に受験できるようになります。
ただ、IBには日本のカリキュラムとは異なり、論文や課外活動もあります。
それらは数学や理科と同じくスコア化されるため、IB対策と国内の一般的な大学受験対策と並行するには労力が増えます。
そして当然ながら英語力は相当量必要とされます。
また、幼稚園からインターに通われているお子様などで小学生のうちからIBスコア取得の戦いが始まっていることから、早いうちから海外受験対策が行われていることが窺い知れます。
国際バカロレアディプロマ(IBDP)認定を取得する事が重要
大事なのは、行きたい大学、目指したい職業、活躍したい場を定め、確固たる意志の下、IBDP認定を取得する事です。
IB入試では多くの医学部を受験することができます。
国内では東北、東京医科歯科、筑波、横浜市立、岡山、広島、鹿児島の国公立、私立でも順天堂、愛知医科等がIBを導入しており、なかには筆記試験がなくIBスコアと面接・口頭諮問等で評価される大学もあります。
海外では、主にオーストラリア・イギリスの大学でIBが優遇されていますが、アメリカではそもそも4年制大学に医学部はなく、医師になるためには4年大学修了後のメディカルスクールに進む必要があります。
また、4年制大学の受験には、日本でいう共通テストであるSATという試験が必要です。
SATではIB資格がそこまで優遇されるわけではないため、IBのスキルがSATに役に立つと考えておいた方がよいでしょう。
まずは、行きたい大学や国によって、IBDP認定を取得するべきかどうかを決める事が重要です。
中東欧のハンガリー・チェコの国立医科大が人気
近年、中東欧のハンガリーやチェコの国立医科大が人気を集めています。
この2国は広く海外からの医大生を募っており、門戸も大きく開かれています。
人気の理由は、
・IB資格が不要
・日本に事務局がある
・受験科目に数学がない
・日本と比較して学費が安価
などの点です。
ハンガリー国立大には4つ、チェコ国立大には2つの医科大学があり、それらを受験するために予備コースが設けられています。
この予備コースは医学部本コースで学ぶための語学力や理科系科目の学力を付ける目的があり、半年~1年程度勉強し、医学部本コースを目指します。
この予備コースに入るためにも試験があり、英語と理科が課されますが、理科に関しては共通テストよりも易しいとされています。
海外医学部受験のメリット・デメリット
海外医学部への受験はメリットもデメリットもあります。
受験だけでなく、医師免許取得に至るまでも国内と大きく異なります。
メリット
・入試科目が国内より少ない
・国によっては国内と比較して学費が安い
・入学難易度が国内よりも低い
デメリット
・卒業の難易度が高い
・日本語で勉強できない
・医師免許取得までに審査や予備試験等が必要になる可能性がある
日本の医学部は6年間で4,000万円ほどの学費が必要となる場合がほとんどですが、海外医学部の場合は6年間で1,200万円〜1,800万円程度と日本よりも安く、大きなメリットとして注目されています。
また、海外医学部は入試科目が日本国内の医学部よりも少ないため、入学の際の難易度が低く、逆に卒業に至るまでの難易度は国内よりも高くなるという傾向があります。
国によっては、在学中に現地の国家試験に合格することにより、卒業後に現地医師の資格が得られることもあり、活躍の場が広がります。
しかし、海外医学部を卒業後に日本で医師として活躍する場合は、日本の医師国家試験を受験する前に厚生労働省による審査が入ります。
この審査の結果によっては予備試験の受験や1年以上の実地修練が必要になるなど、医師国家試験の受験が国内卒業組よりも遅くなるといった可能性があり、これらをデメリットと捉える人もいます。
面接が英語で行われるため、英語に相当な対策が必要
ハンガリーやチェコの医科大学の入試は英語のスキルが必須であり、ハンガリー国立大ではTOEFL iBTという国際的な英語資格で61点以上、英検でいうと準1級レベルの力が必要です。
面接も英語で行われるため、英会話に相当な対策が必要です。
また、留学生向けの予備コースがありますが、予備コースを経ずに医学部本コースを受験することも可能です。
入試では予備コースの内容に加え、小論文、口頭試験、医療英語、生物・化学が課されます。
9月入試のため、予備コースを経ると国家試験を受けるまでに日本の医学部に比べると約2年の遅れが出ますが、英語に自信がある受験生以外は予備コースを経る方が結果的に近道となることが多いです。。
ただ、海外医学部は日本の医学部に比べると入学してからがハードです。
一般的に、国試を受けるまでのカリキュラムの難易度は日本に比べて高いと言われています。
卒業後の医師国家試験へは国内と異なる流れ
海外医学部を卒業した場合、医師国家試験受験までの流れが国内大学を卒業した場合と異なります。
国内大学医学部を卒業した場合、特に審査等なく医師国家試験受験に挑むことになります。
しかし海外医学部卒の場合は、厚生労働省の審査を受けてクリアした後でないと医師国家試験を受験することができません。
この厚生労働省の審査にて、医師国家試験の受験資格もしくは予備試験受験資格の認定を受けることにより、医師国家試験受験が可能になります。
ただし、審査の結果いずれにも該当しない場合には受験資格なしの判断が下されます。
受験資格なしとなるのは、卒業した大学に関して、大学附属病院の状況や教員数等が日本の大学に比べて劣っていると判断された場合などです。
受験資格なしとならないよう、海外大学受験を考える際には
・大学のカリキュラムや教員数
・附属病院の規模や質
・卒業生の進路
などに関して十分な情報収集が必要です。
医学部受験では、国内だけでなく活躍の舞台をグローバルに検討
IB入試・東欧医学部と選択肢は増え、医学部受験はより多様化しています。
国内だけでなく、活躍の舞台をグローバルに考えて自分の夢を拡げてみてください。
国内外の医学部を受験するにあたって英語の力を身につけておくことは、受験を有利に持っていくことができる効果的な対策です。
国内でも、広島や佐賀、兵庫医科のように英検優遇をしている医学部も増えてきています。
受験英語対策が優先ですが、中学生~高2生は英検・TOEFL・GTEC・IELTS・TEAP等の資格・スコアは取っておく事をお勧めします。