高等学校の履修科目は、中学校に比べて選択の幅があります。
なかでも理科と社会科は、多くの高校で生徒の側で選択でき、かつ大学受験に大きく関わってくる教科です。
自由度が高く「好きな科目を選べる」反面、どの科目を選ぶべきか悩む生徒さんも少なくありません。
今回はそのうち、理科について少し詳しく見ていきたいと思います。2012年度からの高校理科の科目は、次のようになっています。
科学と人間生活 | |
---|---|
物理基礎 | 物理 |
化学基礎 | 化学 |
生物基礎 | 生物 |
地学基礎 | 地学 |
このうち、「基礎」の付いた科目2つと「科学と人間生活」、あるいは、「基礎」科目3つが全高校生必修となっています。
「科学と人間生活」はセンター試験の科目に入っておらず、多くの高校で開講していません。
実質、「基礎」科目3つが必修と考えてもらっていいでしょう。
文系を選択する場合はほとんどの場合「基礎」科目のみの履修となります。
この場合は受験科目にどれを使うかを決めればいいだけなので、さほど悩ましいことはありません。
問題は理系です。
高校の理系コースでは、「基礎」科目に加え、「基礎」の付いていない科目を2つ取らなければならない場合がほとんどです。
また、理系学部の受験では、理科は数学・英語と並んでかなりのウェイトを占めます。
理科のどれを選択するかが受験を左右することにもなり得るわけです。
理科選択によっては受験できない理系学部
大学の理系学部の受験では、理科の科目を指定しているところが少なからずあります。
理科の選択によって受験できるかどうかが左右されるので、行きたい大学・学部がはっきり決まっている中学生や高校1年生の皆さんは、志望大学・学部が理科のどの科目を受験で課しているのかチェックしておいた方が良いでしょう。
一般的な傾向として、工学部は「物理・化学2科目指定」や「物理または化学の1科目選択」のところが多く、他の理学部・農学部・薬学部・医学部などは「物理・化学・生物のうち2科目選択」や「物理・化学・生物のうち1科目選択」の場合が多いです。
大体の傾向を簡単にまとめると次のようになります。
物理 | 工学部で必須のところが多い |
---|---|
化学 | 理科2科目指定の場合ほとんど必須で、取らないと受験校の選択肢が大幅に減る |
生物 | 工学部以外は受験可能なところが多い。必須の場合は少ない |
地学 | 受験できる大学は一部の国公立大学に限られる (参考リンク:地学で受験できる大学) |
「地学」は表にあるように受験可能な大学が少なく、特に理系学部全てで「地学」を使って受験できるのは東京大学くらいであるため、高校でも開講していないところがほとんどです。
逆に「化学」は履修しておかないと受けられない大学が多いという事情から、多くの高校の理系コースで必修扱いになっています(物理・生物の2科目を選択できる高校も一部にはあります)。
従って、理系の高校生の多くは「化学必修で、物理か生物のいずれかを選択」することになります。
工学部へ進学したい場合は物理・化学以外の選択の余地はほぼありませんが、他の学部へ進学したい場合は「物理で受験するか、生物で受験するか」を決めなくてはなりません。
物理と生物、どちらが有利か?
理科2科目のうち1科目は化学として、あと1つが物理・生物どちらでも良い場合、どちらを選択すべきか? これは、受験関係者のなかでも意見が分かれています。
一部には「医学部受験には物理が有利」という意見もあります。これは、「生物は大学入試では論述問題が多く、満点がとりにくい」という根拠によるものです。
しかし、たとえ高得点勝負になる地方国立大学医学部であっても、物理で満点を取れる受験生はそもそもごく少数であり、生物の入試でも、満点は難しくても高得点を取ることは十分に可能です。物理と生物のどちらが難しいかも大学によって違い、物理の方が難しい傾向の大学も少なからずあります。
「物理と生物のどちらが受験に有利か?」は一概には言えない、というのが実際のところでしょう。
では、他の教科との関係はどうでしょうか?
物理の概念はどれも数学と関連が深く、入試では計算力も要求されます。数学が得意な人は物理も得意であることが多いとよく言われます。
一方、生物の入試問題は、概念を文章で説明したり、複雑な実験の結果を考察させたりするものが多く、理科の中でも論述力・読解力が最も問われます。
従って、国語、特に現代文の力が要求されます。
では、数学が得意なら物理をとるべきで、国語が得意なら生物をとるべきか?
そうとは言い切れません。実際には得意科目がそのまま連動するとも限りません。向き不向きの参考程度に考えておくのが良いでしょう。
「好きな科目を選ぶ」ことの重要さ
では、結局どうすればいいのか。答えは、「選択の余地があるなら、迷わず『好きな方』を選ぶべき」です。
これは、「どっちを選んでもあまり変わらないから好きなのを選べばいいよ」という意味ではありません。
「好きな科目」を選ぶことは受験の結果に直結します。
大学入試の理科では、「受験生が高校の授業で習っていない現象」を扱った問題がしばしば出題されます。
高校理科よりさらに進んだ内容を踏まえた出題や、最新の研究成果を反映した出題などです。
もちろん、知識として知らなくても解けるような配慮はなされています。
しかし、そうした内容を事前に知識として知っていれば圧倒的に有利なのは言うまでもありません。
直接的に内容を知らなくても、最新の研究の話や進んだ内容に親しんでいれば、はるかに有利になります。
大学側がそのような出題をするのも、高校内容に留まらず、科学に積極的な興味・関心を持っている受験生に来て欲しいという意図が含まれているわけですね。
そうした最新の知識や深い理解は、もともとの科目への興味・関心がなければ得られるものではありません。
また、生物は記憶すべき事項が大量にありますし、物理の計算に習熟するには時間がかかります。
好きな科目でなければ、そのような努力のモチベーションを得るのも大変です。
物理も生物も化学も地学も、いまは深く学べるウェブサイトがインターネット上にたくさんあります。
好きな科目について、高校内容に留まらないトピックを自分どんどん調べていけば、受験にも、大学進学後の学習にもつながっていきます。
そのために最も大事なのは「好きであること」です。「好きなことを学ぶ」ことこそが、高校の科目選択の自由度の原点です。
有利とか不利という情報を気にし過ぎず、自信をもって好きな科目を選びましょう。
どうしても自分で考えるには怖い・不安と言う方は気軽にお問合せください。
あなたにあった理科科目を一緒に考えさせていただきます。 → こちらまで