「リットル」はなぜ大文字になったの?

コラム

学校で教わる内容は、時代によって変わることがしばしばあります。

小学校で習う体積の単位「リットル」の表記もその一つです。

 

国際ルールに沿った形式に合わせた単位の表記

2010年度までは、日本の小学校ではリットルという単位は「ℓ」と綴るように教えられてきました。

これは「筆記体」と呼ばれる自体で小文字のLを表記したものです。

ところが2011年度から、リットルは大文字で「L」と書くように突如変更されました。

比較的最近のことなので、保護者の方の中には「自分の頃と変わっていて驚いた」という方も多いかもしれません。

この変更の理由は、「国際ルールに沿った形式に合わせた」というものです。

単位系の国際ルールは、「国際度量衡委員会」という国際機関が決めています。

この組織は、単位の表記だけでなく、単位の厳密な定義などについても決定しています。

質量の単位「キログラム」の定義の変更が昨年決定されたことをご存知の読者もおられるでしょう(新定義は今年5月から施行されています)。

 

大文字の「L」(リットル)はルール違反!?

実は、本来のルールでは、リットルは大文字で綴ってはいけないんです。

これは、「大文字で綴る単位は人名にちなんだもの」というのが原則だからです。

人名にちなんだ国際単位系の単位記号をいくつか見てみましょう。

 

人名にちなんだ国際単位系の単位記号

単位 人名
力の単位「N」
(ニュートン)
アイザック・ニュートン
(万有引力理論の完成者)
電流の単位「A」
(アンペア)
アンドレ=マリ・アンペール
(磁場の法則の発見者)
電圧の単位「V」
(ボルト)
アレッサンドロ・ボルタ
(電池の発明者)
仕事率の単位「W」
(ワット)
ジェームズ・ワット
(実用的な蒸気機関の開発者)
圧力の単位「Pa」
(パスカル)
ブレーズ・パスカル
(流体力学の基本原理の発見者)

このように、大文字の(あるいは大文字で始まる)単位は基本的にすべて人名に由来しているんですね。

「m」(メートル)などの人名に関係ない単位は小文字で書くことになっているんです。

ではなぜリットルは大文字になったのか?

それは、単位表記のもう一つのルール「単位には筆記体や斜体を使わない」が関わっています。

 

物理学では、「質量」を m ,「力」を F などというように、物理量を斜体のアルファベットで表記します。

単位をも斜体や筆記体で表記してしまっては、物理量(長さや質量)の表記と単位の表記がごちゃごちゃになってしまうからです。

しかしそうすると、「リットル」はブロック体やローマン体で「l」と表記するしかなくなってしまい、数字の「1」(いち)と非常に紛らわしい。

そこで妥協案として、「リットル」に限っては大文字と小文字、どちらで表記してもいいという特別ルールが1979年に設けられました。

 

結局、もともとの国際ルールでは、筆記体を使うのは最初からダメだったんですね。

国際ルールで「リットル」に大文字「L」を使ってもいい、となったことに合わせて、日本の学校では数字と紛らわしくない「L」をリットルの表記として教えることになりました。

学校で習うことの背景には、色々と面白い事情が隠れていることがしばしばあります。

読者の皆さんも、気になったら調べてみると面白いかもしれませんね。

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