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日本のマツタケはなぜ採れなくなったのか?

マツタケの美味しい季節ですね。

マツタケは非常に高価な食材で、特に日本国内産のものは高級品なので、食べたいけどなかなか手に入らないという人も多いかもしれません。

マツタケは高級品ではなかった!?

実は、マツタケが高級食材の代名詞になったのはそれほど古い話ではありません。

日本特用林産振興会のウェブサイトの統計ページにある「国内価格の推移」データ※1を参照すると、今から50年ほど前の1965年におけるマツタケの価格は1kgあたり1591円。

同時期の干しシイタケ1kgよりも安かったんです。

なぜこんなに安かったのかといえば、単純に生産量が今よりずっと多かったからです。

福岡教育大学の福原達人先生のウェブサイトの統計データ※2を見ていただくと、1950年代あたりからマツタケの生産量が物凄い勢いで減少しているのがわかります。

マツタケは、昔は今よりずっと沢山採れていて、庶民にも手の届きやすいキノコだったんですね。

それがどうして、こんなにも採れなくなってしまったのでしょうか?

マツタケとはどんなキノコなのか

日本のマツタケはなぜ採れなくなったのか アカマツ
マツタケというキノコは名前の通り、松の木、特にアカマツの根元の近くに生えます。

これは、マツタケがアカマツなどの松の木の根と共生関係にあるからです。

アカマツという樹種は、日あたりのよい土地を好みます。

新たにアカマツの幼木が育つのは、周囲にまだ樹木が少なく、光を遮らない場所です。

そうした場所では、落ち葉などの堆積が少なく、土壌があまり発達していません。

そのような痩せた土地で十分なミネラル分を確保するために、アカマツはマツタケと協力関係を結んでいます。

マツタケの菌糸がミネラル分を吸収してアカマツに提供し、代わりにマツタケはアカマツから糖などの栄養を受け取っています。

このように、樹木と共生関係にある菌類を菌根菌と呼びます。

このアカマツとの協力関係を抜きにマツタケだけを栽培するのは非常に難しく、マツタケの人工栽培がなかなかうまくいかない理由になっています。

マツタケと日本の生態系

アカマツはマツタケとの協力関係のおかげで、痩せた土地には強いんですね。

ところが、土壌の豊かな肥えた土地では、他の樹木との競争に負けてしまいます。

つまり、マツタケが少なくなった理由は、日本の森林の土地が肥えて土壌が豊かになったからです。

日本のマツタケはなぜ採れなくなったのか 薪

ここで「えっ!?」と思われる読者の方もおられるでしょう。

「昔の方が自然が壊されていなくて、森林の土壌が豊か」というイメージを持っている人は多いと思いますが、実はそんなことはないんですね。

昔は薪などの燃料として、大量に樹木の伐採や落ち枝の採集が行われていました。

森林の土壌形成は人間活動によって阻害されていたんです。

石炭や石油がエネルギー源として普及したことで、燃料を山林に依存しなくなり、落葉落枝が放置されることで森林の土壌は肥えていきました。

その結果、マツタケにとっては生育しにくい環境になってしまった、というわけです。

生態系の構造を乱したり環境を変えてしまうような現象を全般に「攪乱」と呼んでいます。

自然に起こる攪乱としては台風や山火事などがありますが、薪の採集や伐採などの人間活動も攪乱として作用します。
大きな攪乱が頻繁に起こると生態系はダメージを受け、多様性が低下してしまいます。

しかし、攪乱が少なすぎると、アカマツのような種が競争に負けていなくなってしまい、やはり多様性は下がってしまう。

人間活動が「適度な攪乱」として生態系の維持に役立っていることもあるわけです。

ただ、それがいつも「適度」とは限りません。

江戸時代には、燃料に使うための樹木の伐採のし過ぎではげ山になることも多かったと言われています。

人間が自然に手を加えることが常に良いとは限らないけれども、手を加えた方が良いこともある。

そのバランスのとり方は非常に難しいです。

生態系の変化自体、まだまだ分からないことが多くあります。

人間活動を良い・悪いで単純に決めつけて考えるのではなく、人間活動がどんな影響を与えているのかを常にチェックしていくことが、豊かな生態系を保っていくためには大事なのです。

参考文献※1 日本特用林産振興会のウェブサイトの統計ページ(PDF)
http://nittokusin.jp/wp/japan_special_forest_product_promotion_association/statistics/

※2 福岡教育大学の福原達人先生のウェブサイトの統計データ(ページ一番下のグラフ)
https://ww1.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/zuhyou/shinrin_data3.html

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